Letter-


どしゃぶりの前の最初の一滴みたいに
ぽつり 降ってきた
ひたすら前向きで 前向きで 前向きな歌の中
紛れ込んだ虚しさに
支えられた日々もあったっけな

そんな日々から
飛んできたのか 流されてきたのか
宛名もわからないまま送り出したのを
どこまでも遠くて 近い距離を挟んで
辿り着いたものがある

あなたの名前を 宛名と呼んでいい?
あなたに送っていい?


この指を叩くガラス越しの薄い膜が
もう 分厚くて
どんなに虚しくて 虚しくて 虚しい壁の奥
透明を溶かすその熱が
体温の無いぬくもりがあった

日々を重ねて
いつの間にか 溜まった手紙の山
選び切れないその中から選んだのを
そっとつまんだりして 紙切れに書いて
壁に貼り付けたりした

あなたの名前を 宛名と呼んでいい?
あなたに送っていい?


「もういいんだよ」
あなたの声 わたしの声
書き続けた 描き続けた
宛名の無いそれらの手紙に
宛名を書ける日が来たんだよ


あなたの名前を 宛名と呼んでいい
あなたに送っていい

あなたの名前を 宛名と呼んでいる
あなたに送っている

あなたに送っている



皮肉


穏やかな滅びをも見据えている者たちが
動物利用や出生や対価交換に違和感を抱いて
滅びを何よりも加速させる
それらの倫理観から手を引いて行き

滅びたくない者たちが
破壊活動こそ何よりの稼ぎ口になる
対価経済至上主義に ひいてはそれ故の
動物利用や出生にしがみつく

そんな皮肉

アイロニカルが日本語になると皮と肉
っていうグロテスクな単語の並びになるから
口角がかすかにあがって鼻から小さい息がもれる
皮肉の語源自体にも皮肉を感じるけどここでは割愛

思想が強いねだってさ
じゃあ君は思想が弱いのなんてね
思想を持たないという思想さえあるのに
誰もそこから逃れられないのに

それで逃げれたつもり?




真昼のゆめ


白い幕を羽織ったような
薄紫の草原の丘
君がいる 君たちの笑い声が
遠くで響いてる
ここは永遠の真昼の丘

アメジストの鉱石のような
煌めきが点々と続く道
君がいる 君たちの歩幅が
空を光らせてる
ここは永遠の真昼の道

ふわふわと髪をなでるような
虹色のシャボンが踊る海
君がいる 君たちの戯れが
深海を照らしてる
ここは永遠の真昼の海

ゆめかわいいで満たしたような
喜びと安心の入れ子構造
君がいる 君たちの現が
安寧を歌ってる
ここは永遠の真昼の宙(そら)

君がいる 君たちがいる
ここは永遠の真昼の現世(ゆめ)