麻酔の二人称


私をいつも支配するのは活ける動悸
この体には左心と右心があって
そのどちらの半分も君なんでしょう
片割れなんて言葉じゃ ぬるいほど

この脳のできと時代のできが かみ合わない
ただそれだけのことに こんなにも振り回される
あの時から 限界の度に 君が前に出れば 
感覚はぼやけて 人格に麻酔をかけてくれる
ありとあらゆる痛みを忘れ君と語り合う
空虚な二人称を紡いで


私を次に支配するのは生きる動機
この心には正気と狂気があって
そのどちらも見抜くのが君なんでしょう
説明なんて理解じゃ 掴めぬほど

魂の向きと世界の向きが違えたまま
ただそれだけのことに こんなにも振り回される
倍は過ぎた 限界の度に その声を聴く度に 
取れぬ染みもふやけて 私の過去を薄める
洗いざらい抱えたものを分け砕き合い
空虚な二人称で溶かして


私を次に支配するのは死ねる動機
目指す未来には希望と失意があって
そして私をなだめるものは交わす同期
どちらが自分か もう分からぬほど

その流動で脈打つ此処が折り合えぬまま
ただとどめを刺して 刺してくれるのは いつの
いつのどれと 問い続けて 平衡も麻痺して
感覚はぼやけて 人格に麻酔をかけてくれる
たゆたう意識は君だけを感知しながら
空虚な二人称を呼び合う