喪失の詩

 


人生は喪失の連続だ 


それは淡々と落ちる砂時計




人生は喪失の連続だ


それは折れたクレヨンと閉じた楽譜




人生は喪失の連続だ 


それはあなたの指の温度




人生は喪失の連続だ 


それはあの日の約束




人生は喪失の連続だ


それは色あせた造花の薔薇




人生は喪失の連続だ


それは風が乗るブランコ




人生は喪失の連続だ


それは君が失敗と呼んだ愛




人生は喪失の連続だ


それは                                 喩えを嫌う空白




人生は






人生は出逢い(さいせい)の連続だ


それはひっくり返る砂時計





本音イズム



マントとスカート

裏表のヒラリズム

隙間から肌色

傷痕のチラリズム

サングラスに隠した目つきも

シュシュで隠した本音も

彼方 彼方なら

見ててくれるでしょう





しましまと青


うつしよの話をしよう
僕と君はもっと
うつしよの話をしよう
 
「生きるのムリでした」って
油性マジックで書かれた窓枠見るたびに
死ぬのをがまんするのが苦しかった日々を
思い出したりする
 
命を守ることが先決だからねって
向かえられた閉鎖病棟
鉄格子がかけられた窓から見える
しましまの青空がなんだか切なくて
かわいかった
 
そこで出会った人たちは
深い話はできなくても
普通がないって前提があったから
なんとなく安心した
 
マスクにアロマを垂らすことを
教えてくれたあの子は今
買い物を自分でコントロールできるように
なっただろうか
 
人の声が耳をひっかく相部屋に
居られなくなって
ついに廊下にうずくまってた早朝
「大丈夫?」って声をかけてくれた
あの人は今どうしてるだろうか
 
自分の感じてる苦しみが
ほんとなのかどうかわからなくなって
この痛みってほんとなのかな
ほんとに感じてるものなのかな
助けを求めてもいいものなのかなって
傷を確かめるように
手首に走らせた刃の冷たさ
 
その冷たさにつられるように
冷えた血の温度が
自分の冷たさを思い知らされたようで
なんだか機械になったようで
哀しくても安心した日
 
それでもやっぱり生きてた私
有感のわたし
 
鉄格子のしましまみたいになって
バイト中の飾った笑顔の邪魔をした
左腕はもう以前のようにはうずかない
 
もう傷を肉眼で見えるように
具現化しなくても大丈夫になった
わたしは今
しま模様ひとつない空を見上げています


わたしは境界線


わたしは境界線でした
何にもなれない
わたしは境界線でした
どこにもいけない
わたしは境界線でした
大好きなひとほど傷つけてしまう
わたしは境界線でした

星になってしまったアカウントを思う
星になってしまった言葉たちを思う

夜明け前の空が一番暗いって
そんな常套句を知る前のわたしが
リアルに夜明け前の砂利道を散歩しながら
それをイヤでも実感したあの日

怒号と拳を飛ばしてたあの人も
戦争で傷ついていたことを知って
憎むことすらできなくなって
呼吸の仕方がわからなくなったあの日

幼かったわたしが
日常的に得られなかった穏やかさの中に
放り込まれたとき
家族団欒の風景にどうしても馴染めずに
なぜわたしの家はこうじゃなかったのかと
赤黒い気持ちがどろりどろりと滴ってうるさかった
あの日

境界線という
狭い狭い一本の線に
閉じ込められていったのかもしれない

わたしは、境界線でした
 
どんなにしあわせになっても
苦しい気持ちが消えないから自殺したっていう
あの子に共感しすぎるから
ノイジーな音楽聴く

寂しさに、魂の底から飽きてきたから
そろそろ境界線を越えてそっちに行きたい
なんて思った次の瞬間に
越える境界線なんかなくて
自分自身が境界線なんだと思い知らされる
どこまでも逃げられない

あのときの涙も、痛みも苦しみも
ぜんぶ意味のあるものに変えてやるしか
なくなるでしょう
それは、暴力や無関心を
正当化するためなんかじゃない 

今日のわたしが
今日のあなたが
どうか今日を、あと一瞬を
流れていけるための
おそらく祈りに近いようなものだ

あくまで自分のためにあって
あくまで自分のためであって
 
あと一日だけ生きるって決めて
そんな日々を繋ぐことで
今日まで生きてこれたあの頃みたいに

わたしは境界線だから
こんなふうに一本の糸のように頼りない
わたしは境界線だから
こんなふうに一本の糸のように貫ける自分もいる
わたしは境界線だから
此処は境界線ではなく
もともと、とある場所だったんだと
気づけるときもある
わたしは境界線だから
なんにでもなれる
わたしは境界線だから
どこにでも行ける
わたしは境界線だから 
だいすきな人が
ただひたすらだいすきという
一本の糸を紡いでいるだけだった
わたしは境界線だから
この線の先、 きっとあなたにも辿り着けるでしょう

わたしは境界線だから





気体にノックを



たとえばカテゴライズは

ノックを可能にするための扉であって

排他の精神に則った有刺鉄線ではない

ましてや

自分や誰かを閉じ込めるための鉄格子ではない


空白を読み取ってほしい


なんて言い出したら

そもそも言葉なんて紡ぐ必要性がない

私の存在が空白になってしまう

気体になって

気体になって

炭酸みたいにどこかに抜けていってしまう


それでも

行間に何かを感じてくれるあなたが

テレパシれるあなたが


気体になった私でさえも

感知してくれるあなたが


触れないはずの気体に

気体を気体のまま閉じ込めずに

新しいカテゴリを与えて

きっとノックを可能にする




あんぱんみたいなわたしみたいなあんぱんが主張するわたしについてをあなたに伝える


ひと口かじられて
「腐ってる」
って判断されたあんぱん
 
「まるでおまえみたいだろ」
ってゴミ箱から見上げてきたから
今日はもうがんばらないって決めた
 
なつかしい刃物の感触すべらせちゃおっかな
なんて考えたりもする日々に何を贈ろう
 
自分を大切にしなきゃ
自分を大切にしなきゃ
自分を大切にしなきゃ
自分を大切にすることで得られる
すべての平和のために
自分を大切にしなきゃ

自分の平和が
世界の平和と繋がってること
否定しきれなくなってから
利己利他のバランスがとれなくなってった
 
誰かのいざというとき 役に立たない法律

それでもあきらめたくないと
呼吸を繰り返すことを
やめられないわたしが
あなたが
ほらまた目を覚ます
 
あんぱんが棄てられたゴミ箱には
キミがくれた星屑もあっただろうに

ほんとうにほしいものはなんだ
断捨離してスッキリした気になるためだけに
棄てられたものを拾い直そう
私が私であるために
君が君であるために
誰かのため、何かのために
棄ててしまった
ほんとは棄てたくなかったもの
まだ拾えるよ、まだ拾えるよ、まだ拾えるよ
 
今のこの立ち位置は
他の誰でもない私の選択の結果だ
無限の可能性なんてなくて
限られた選択肢からでしかなかった
そんなことも含めて
他の誰でもない、私が私を拾ってきた
私の選択の結果だ
そのときそのときで
精一杯生きてた
私の選択の結果だ
だからどこまでもどこまでも
惜しんでいないよ
惜しんだことも惜しんでいない私が
今ここでこの文字を叫んでいるよ
 
空の上に届かなくても大丈夫
私に届いていれば大丈夫
キミに届いていれば大丈夫
モノトーンのゴシック体は
空の上よりも突き抜けて
ここに帰ってくるだろう
 
そしたら「おかえり」って
抱きしめるから
あんぱんかじって甘いって笑う
私をまた見せるから