雨の降る森に


内臓を押し上げられるような焦燥感に負けそうな夜。
レイニーフォレストの香りが癒してくれる。
アロマディフューザー
なんておしゃれなものは持ってないから
ティッシュに1.5滴ほど垂らして鼻に押し当てる。
いつだったか、閉鎖病棟で一緒の部屋になった子に
「マスクにアロマを垂らしてかけてるといいんだよ」
って教えてもらったことを思い出す。

なるべく薬に頼らないように。
今日はアロマでだいじょうぶだね。
だいじょうぶってギリギリ言えるくらいにはだいじょうぶ。

自分から決断して入院したって言ってたあの子は今どうしてるだろう。

誘われて、ベッドの上、二人で座って小悪魔ギャル系の雑誌を見てた。
本人のビジュアルからはそんな気配なんてこれっぽちも感じられないのに
「やっぱ女の子はこうでなくっちゃね~」
なんてうっとり笑って言った顔が
とてもかわいくて、愛おしかったなと今でも思う。

そこまで仲良くなれたわけでもない。
仲良くなろうとしてくれた彼女より早く
退院を選んだ私を、惜しむように見てくれた。

病院では癒されなかった。
そんな私のことを。知らないまま。
とてもうれしかったし、もっと話してみたかった。

私はどれだけのものを与えられるんだろう。
どれだけのものを奪ってしまったんだろう。

今度は鉄格子ごしの空じゃなくて
広々とした空の下で
そういう人と出会えたときに
私はもっと上手に笑えていたい。

一緒に笑えるなら、雨が降っててもいいよ。

ひとり、深夜の部屋に香る。
メッセージも返せないままこの日記を書いている。

一緒に笑えるなら、雨が降っててもよかったのに。
だけど本当は、その雨は、優しい雨であってほしかった。
そんな本音がスコールみたいに止まなくなってしまった。
吹雪の中でも笑って歩けたあの子も、もう、いないのに。